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レッツさがすたいるトークvol1 を開催しました【前編】

 令和2年度第1回目の「レッツさがすたいるトーク」は、「認め合い、支え合う社会づくり 多様性について語り合おう」をテーマに、唐津市のコワーキングスペース「MEME KARATSU(ミームカラツ)で開催しました。

 私たちが暮らす街では、好きなもの、嫌いなもの、得意なこと、苦手なこと、健康状態、家族構成、生活環境などが違う多くの人が生活しています。
 みんなが暮らしやすい街にするためには、一人ひとりが相手の立場や気持ちに寄り添い、必要な時に手を差し伸べ、支えあうことができる、やさしさが必要です。
 そこで今回は、私たちができる「さがらしい、やさしさのカタチ」について、街で暮らす様々な人の立場や視点、感覚などの違いをVR(ヴァーチャルリアリティ)装置を使って体験・理解しながら、一緒に考えていきました。

 VR装置での擬似体験を通して、いろいろな人の立場を体験・理解したいと、県内外から31人、オンラインでも15人が参加されました。

6本のVR体験を通して今回のテーマ、
「みんなが暮らしやすい街にするためには?」
「コミュニケーションを深めるためにはどうしたら良いのか?」
をディスカッションし、考えを深めていきました。
イベントに参加して感じたことをレポートします。

●イベントの流れ
 今回ファシリテーターを務めたのは、VRのコンテンツを作成した株式会社シルバーウッドの大野彩子さん。コンテンツは当事者の体験や話を元に再現されているため、とてもリアルに感じられました。
 参加者は3人1組となり、VRを体験した後「自分はどう感じたか」「周りの人にどう接してほしいと思ったか」をグループディスカッションし、多様な人との関わり方を考えました。

【VR体験1/認知症「私をどうするのですか」】
 「認知症を取り巻く問題とされていることの多くは、ご本人の問題ではなく、周りの人の理解不足で起きている可能性が高い」と大野さん。
認知症で脳の働きが低下することによって起こる中核症状の一つに「視空間失認」があり、距離感や平衡感覚が掴めなくなります。それを立った状態で体験した参加者からは、
【感想コメント】
 Aさん:怖かった。介護する人が先に手本を見せてくれれば掴まって行けるかも。
 Bさん:介護する側の視点だけしかもっていないと理解ができない場面だと思った。
 Cさん:私だったら「どんなサポートが必要ですか?」って声かけしてもらいたい。
といった感想が出ました。

~当事者に話を聞こう~
 当事者と周囲の人で思いがすれ違うのには、相手の属性に対して無意識の思い込みや決めつけ「アンコンシャス・バイアス」が働くのが一因です。認知症がある人に対して「この人に聞いても分からなくなっているだろうから、こっちがしてあげなきゃ!」と思い込み、相手の話を聞かなくなっている場合もみられるそうです。
 印象的だったのは、大野さんが認知症当事者の人から言われた「認知症と診断された途端に話を聞いてくれなくなった。私に話を聞いて欲しいのに」という言葉です。
 認知症に限らず、「その人の属性で判断してしまいがちであること」を自覚して、「知ったつもりになるのではなく、本人に話を聞くこと」が重要なのだと思いました。

【VR体験2/視覚障害「ロービジョン」】
 初めて知ったのですが、白杖の利用者全てが全盲とは限らず、視覚障害には視力・視野・色覚・光覚など「見えにくさ」の多様性があるそうです。VRでは見渡せる範囲が限られている「視野の障害」を体験。
 「体験してどんな気持ちになったか、話しかけてきた人にどんな印象を抱いたか」をテーマにディスカッションすると、

【感想コメント】
 Dさん:周りの人には本人の見えていない範囲が分からないから、本人に示してもらう必要があると思う。支援する側の「どこまで見えていますか」という声かけが必要だと感じた。
 Eさん:何となく見えているだけなのに「本当は全部見えてるんじゃないか」と誤解されそう。本当はこう見えている、というのを伝えられないもどかしさがありそう。

 一番の驚きは視覚障害者の必需品がスマートフォンだということです。画面の光を調整して文字を見やすくしたり、見たいものを写真に撮って、その写真を画面上で拡大したりすることで視野を補ったり、音声読み上げなどを補助的役割としてうまく活用している人がたくさんいるそうです。
 しかし、それがかえって「見えている」と誤解され、見えないことによる困難さが周りに伝わりにくいのが問題になっています。
 「まちなかで視覚障害で困っている人に出会ったらどうしたら良いのか、視覚障害者当事者に尋ねたんです。そしたら『SOSのサインを出しているかどうかに関わらず、困っていそうだったら、できることがあるか声をかけてほしい』と言われました。『声をかけられるのが迷惑だと感じることはないですか?』とさらに尋ねると『その人に聞いてください』と言われました(笑)、やっぱり積極的に声をかけることが大事なんだと思いました」と大野さん。
 その言葉に、困っていそうな人を前にした時、「声をかけたら迷惑かなと」悩み、戸惑っている自分に改めて気づかされました。


【VR体験3/発達障害「聴覚過敏編」】
 「発達障害」とは、生まれつきの脳発達の特異性と、周囲の環境や人との関わりのミスマッチから、生きづらさや困難が生まれる障害で、親の育て方や本人の努力不足のせいではありません。
 ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)の人に多い特性の一つに、聴覚過敏があります。運動会のピストルや掃除機、食器が触れ合う音、予測不能なチャイムやサイレンなどの特定の音に耐えられず、イライラしてぐったりしたり、日常生活に大きな不便を感じたりする症状もあります。
 VRでは聴覚過敏がある当事者が、仕切りのない部屋で面接を受けている場面が再現されていました。面接官に質問をされているのに、周りの音が大きくなって、一番近くにいる面接官の声が聞こえづらくなっていく体験をしました。
【感想コメント】
 Fさん:他の声がいっぱい聞こえてきて、面接している人の声がほぼ聞こえなくなって混乱した。当事者はきついと思う。
 Gさん:面接官の質問項目が紙に書いてあれば良いのに。
 Hさん:最初に「私は過敏なので」って言っておけば良かったかもしれない。けど、先に言うことで門前払いをされる可能性もあるから、言えない気持ちもあるのかな。
感覚の過敏性は目に見えないため、周りから誤解を受け「そのうち慣れるよ」「わがままなんじゃないの」と言われることがあるそうです。
また、感覚は他人と比べることができないため、自分が過敏なことに気づかず「みんなも我慢してるんだ」と自分を責めてしまう人も。

~必要なのは合理的配慮(個別の調整や変更のこと)~
 配慮や対策で改善することも可能です。必要な配慮は人それぞれですし、ライフスタイルや職場環境も異なるため、本人とどんどん話して理解を深めることが大切です。
・音が少ない場所への移動を検討する
・音が出ないよう工夫する
・耳栓やイヤーマフ等の使用を許可する


【前半のポイント】
3つの体験を通して、本人と直接話し、対話を深めることが大事だということを知りました。
後半ではどんなコミュニケーションをとったら良いのかについて体験していきました。